樹齢100年を越えるこの五葉松は、ひとつの根から何本もの幹が立ち、
大きな“森”を表現している「根連り(ねつらなり)」という貴重な作品です。
中国中渡(約150年前)の紫泥鉢に植えられ、敢えて必要最低限の水と肥料によって
抑制された“侘び味”が、枝や葉に“老生の美”を表現しています。
ゴルフ場の刈り込みのような人為的な造形美ではなく、自然と歳月がゆっくりと創り上げたものです。
席主は、この盆栽を深遠な奥深い自然とし、春の息吹を思わせる苔と水溜り石、そして、
遥か向こうの山々から雪解け水のように流れる谷間の景色を、
貴船石(京都貴船神社付近で産出される石)で表現しました。
森から足下の春、そして、大自然の象徴である豊かな山容。
三点の構成で日本の風土の素晴らしさを見事に現した一席です。

五葉松根連り
鉢/紫泥外縁楕円
卓/唐木平卓

苔飾り
鉢/焼締南蛮手丸(吉田茂旧蔵)

貴船石
卓/唐木天排卓
